飲食店の「トヨタ生産方式」

皆さんは、「トヨタ生産方式」ってご存知ですか? 製造業を経験したことがある方ならご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、一般の方には、少し馴染みのない内容だと思います。

「うちは飲食店だから、そんなの関係ないよ!」と思ったあなた、大ありです。トヨタ生産方式から見習うことは山ほどあります。なぜなら、飲食店は「効率化」「標準化」「平準化」などといった製造現場では当たり前に考えられてきたことが当たり前ではないからです。

飲食店でこういう話をすると、大抵の経営者は、目の前にお客様がいるサービス業と製造業とは違うと言います。果たしてそうでしょうか。僕の考える飲食店とは、製造業の側面と小売業の側面、サービス業の側面、卸売業の側面といったすべての業種の面を兼ね備えていると考えています。

例えば、キッチンでの食材管理やレイアウト、仕込み、レシピ、原価計算といった要素は、まさに製造業そのものですが、一方で、小売業のように、販売管理と仕入管理などを結び付けたマーチャンダイジングの考え方、メニューブックの中で行われる陳列(料理の配置)やフェイス(枠の大きさ)の考え方などが必要とされる場面もあります。

今回は、このキッチンでの「製造業」としての側面についてフォーカスしていきましょう。

まず、真っ先に考えるのは、トヨタ生産方式のカイゼンの「7つのムダ」です。

 1.つくりすぎのムダ   2.手待ちのムダ   3.運搬のムダ  
 4.加工そのもののムダ  5.在庫のムダ    6.動作のムダ
 7.不良をつくるムダ

これらのムダの中で、最も重要な「ムダ」は、「つくりすぎのムダ」です。

ここで、必要になってくるのが、「マーチャンダイジング」と「デカップリングポイント」の考え方です。

マーチャンダイジングとは、消費者の欲求に適合するような商品を、適正な数量・価格で、適切な時期・場所に供給する企業活動です。特に、適正な数量(仕込み量)を把握するには、販売数量を把握しておく必要があります。

次に、飲食店は基本的に製造業で言うところの「BTO方式」であることが一般的です。「BTO方式」とは、見込生産と受注生産の両方を組み合わせた生産方式で、つまり、「仕込み=見込生産」「調理=受注生産」という図式です。

このBTO方式で重要になってくる考え方が、「デカップリングポイント」です。簡単に言うと、「どのくらい仕込んでおいて」「どこから注文が入ってから作るのか」の中間地点のことです。この考え方をよく理解し、実際の運営に活かしている飲食店として、「未来食堂」があります。「仕込み」を「モジュール化(まるで部品として扱う)」ことで、様々な組み合わせで調理を実現することができます。

その料理の注文頻度や提供までの時間などの要素によって、「デカップリングポイント」を最適にしておくことが、お客様を待たせないだけでなく、ムダな仕込みを無くしたり、新しい価値を生み出すことにも繋がります。

ハンバーグの例で見てみましょう。一般的なハンバーグの仕込みでは、下の図のように行います。見方としては、青枠が仕込み、赤枠からが、注文後の調理、赤い点々の大枠のところがデカップリングポイントです。

一方で、早さが求められるような飲食店では、デカップリングポイントを下げ「揚げる」や「焼く」作業を仕込みとして行い、注文後は、オーブンで温めるだけにする事で、提供速度を上げることができます。

さらに、お客様が柔軟にサイズを変えられるようにして欲しいという要望に対応するには、下の図のようにデカップリングポイントを上げる必要があります。こうすれば、お客様に50gから好きなグラムでご注文下さいとできます。

こんな具合です。おわかりでしょうか。お客様の要望にお応えすることで、ロスが出やすくなることもありますが、時間帯によりデカップリングポイントを変化させることで、ロスを減らすことも可能です。

上記の2番目の例で言うと、ピークタイムは、「焼く」作業までやっておくが、その他は「冷蔵保管」から対応すれば、忙しい時間帯に速く出すことができる上にロスも出にくくなります。

どちらにしても、お客様がいつ、どのくらい来店して、どのくらいそのオーダーが注文されるのかがわからないと決められないため、「マーチャンダイジング」が必要になってくるわけです。まずは、日々の販売数を記録して、月ごと、曜日ごとの需要予測を立てるところから始めてみましょう。

デカップリングポイントのご相談は ⇒ お問い合わせ(担当恒川まで)